「メモした情報がどこにいったか分からない」「あの件、誰かが調べたはずなのに、また一から調べている」。中小企業では、知識が頭の中とバラバラのメモに散らばったまま、誰も引き出せずに眠っています。社内Wikiも共有フォルダも作ったのに、気づけば誰も書かない・誰も見ない。実はこれ、入口(書く場所)が増えるほど続かないという、わりとはっきりした理由があります。
そこで「続かない・探せない」を同時に解消できるのが、使い慣れた LINE を入口にして、AIに「意味」で後から探させるやり方です。具体的には、LINE(みんなが毎日使っているメッセージアプリ) にメモや画像を投げると、Claude(クロード・Anthropic社の対話AI) や ChatGPT が内容を理解して要約し、Supabase の pgvector(スーパーベースのピージーベクター・情報を”意味”で検索できるRAGの土台) に貯めていく。この組み合わせで、「あの件どうだっけ」を自然な日本語のまま引ける状態が、現実的に作れます。本記事では、どの工程で何を使うかまで具体名で説明します。
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結論:ナレッジは「入口を増やさず、意味で引ける」状態にする
社内に知識が貯まらない原因の多くは、やる気でも能力でもなく、仕組みです。「専用のツールを開いて、決められた場所に、整った文章で書く」。この手間が一段でもあると、忙しい現場では続きません。だから入口は、すでに毎日開いているLINEに寄せる。新しい習慣を増やさないのが、続く仕組みの第一条件です。

そしてもう一つが、探し方。フォルダ名やキーワードがピタリと一致しないと出てこない検索では、結局「どこに入れたっけ」で終わります。ここで使うのが RAG(ラグ・AIが手元の情報を”意味”で探して答える仕組み) です。「先月の値上げの件」と打てば、「価格改定」「単価アップ」と書いてあるメモまで意味の近さで拾ってくる。キーワード一致ではなく、言いたいことで引けるのが、人が実際に使い続けられる検索です。
この「入口=LINE」と「検索=意味(RAG)」の二点が揃うと、知識は”貯めるだけで終わる”状態から、“後から引ける資産”に変わります。
向いている会社・向きにくい会社
向いているのは、現場の知識が人に貼りついている会社です。ベテランの段取り、お客様ごとの細かい注意点、過去のトラブル対応。こうした「聞けば分かるけど、どこにも書いていない」情報が多い会社ほど、効果が出ます。出先からスマホでメモを残すことが多い会社や、写真・画像でやり取りが多い会社も、LINE入口と相性が良いです。
逆に、すでに整った社内Wikiが回っていて、全員が検索して使えている会社は、伸びしろは小さめです。それでも「整った文章でないと書けない」心理的なハードルを下げたい、画像メモも貯めたい、という用途なら、入口をLINEにする価値はあります。
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具体的に、どう仕組みにするか
社内ナレッジを「投げるだけで後から引ける」にする3ステップ
- 1LINEに投げる(入口)気づいたこと・画像・メモを、いつものLINEに送るだけ。新しいツールは開きません。
- 2AIが要約して貯める送った内容をAIが読み取り・要約し、検索しやすい形で蓄積します。
- 3自然文で後から引く「あの件どうだっけ」と話し言葉で聞くと、意味の近いメモを集めて答えます。
- 入口をLINEに決める:専用のグループやアカウント(bot)を一つ用意し、「気づいたことはここに投げる」とだけ決めます。書式は自由。整った文章でなくて構いません。
- 送ったものをAIに要約させる:テキストはもちろん、ホワイトボードや書類の写真を送れば、AIが中身を読み取って短くまとめます。「何の話か」のラベルづけまで自動でできます。
- 検索できる形で蓄積する:要約とともに、後で意味検索できる形(後述のRAGの土台)に貯めます。ここが「探せる/探せない」の分かれ目です。
- 自然文で引けるようにする:「先月の値上げの説明、どう言ったっけ」と話し言葉で投げると、関連するメモを集めて答えます。元のメモへもたどれるようにしておきます。
- 貯め先・見せ先を決める:蓄積した内容は、普段見る Notion(ノーション・社内Wiki/データベース) や Google ドライブ にも残す形にできます。「LINEで貯めて、Notionで眺める」も自然です。
肝は、人がやるのは「投げる」だけにすること。整理・要約・検索の準備をAI側に寄せるほど、現場で続きます。
実際に、どの道具を使うのか
ここは具体名で踏み込みます。工程は「入口(受け取る)→ 内容を理解・要約する → “意味”で検索する土台 → 貯め先・見せ先」に分かれ、それぞれに向く道具があります。
入口(受け取る)
LINE が基本です。中でも法人向けの LINE公式アカウント+Messaging API(外部の仕組みからメッセージを受け取れる口)を使うと、送られた内容を自動で後続に流せます。社内チャットが Slack や Microsoft Teams 中心の会社なら、入口をそちらにしても同じ仕組みが組めます。普段いちばん開いているアプリを入口にするのが唯一のコツです。
内容を理解・要約する
Claude や ChatGPT が中心です。長い文章の要点を保ったまままとめるのが得意なのが Claude、画像や雑多なメモを手早くさばくのに広く使われているのが ChatGPT、という具合に、扱う情報の質で選びます。写真メモが多いなら、画像の中身を読み取れるAIを選ぶ、という観点も大事です。
“意味”で検索できる土台(RAG・この仕組みの心臓部)
定番は Supabase の pgvector(情報を”意味”のベクトルに変えて近いものを探せる、データベースの拡張機能)。会社のデータベースをそのまま検索基盤にできるのが利点です。もっと手軽に始めたいなら Dify(ディファイ・RAGのチャットbotをノーコード寄りで組める土台) で形を作り、要件が固まってから自前の構成に寄せる、という進め方もできます。専用の検索基盤に寄せたい場合は Pinecone(パインコーン・意味検索に特化したクラウドサービス) という選択肢もあります。まず動かして試すなら Dify、自社データベースと一体で堅く運用するなら Supabase、と段階で使い分けます。
貯め先・見せ先
すでに使っている Notion や Google ドライブ が自然です。検索の土台(RAG)はその”裏方”として置き、人が眺めるのは慣れた画面のまま、という形にできます。
この仕組みに使う主なツール(例)と、それで得られること
- ALINE(入口)毎日使うアプリに投げるだけ。新しい習慣を増やさず、メモも画像も貯まります。
- BClaude / ChatGPT(内容を理解・要約するAI)送った内容を読み取り・要約し、検索しやすい形に整えます。
- CSupabase の pgvector / Dify("意味"で検索するRAGの土台)「あの件どうだっけ」を自然文で引ける。キーワード一致に縛られません。

実は、株式会社Head High 自身もこの形を社内で使っています。LINEを入口にしたナレッジ用のbotにメモや画像を投げると、AIが要約して貯め、後から自然文で引けます。日々の気づきを”流さずに残す”のに、地味ですが確実に役立ちます。
つまずきやすい点
- 入口を増やしてしまう:「専用アプリも入れましょう」とやった瞬間に続かなくなります。入口は今いちばん開いているもの一つに絞るのが鉄則です。
- 何でも貯めて整理しない:ただ投げるだけで要約・ラベルづけを省くと、量が増えるほど引けなくなります。貯める時点でAIに整理させるのが近道です。
- キーワード検索のつもりで使う:RAGは”意味”で探す仕組みです。完全一致を期待してうまくいかない時は、言いたいことを話し言葉で投げ直すと当たります。
よくある質問
Q. 社内の機密情報を、AIに渡して大丈夫ですか? A. 何を貯めるか・何をAIに渡すかを線引きすれば運用できます。外に出せない情報は社内に閉じた形(外部の学習に使わせない設定や、社内に置く構成)にし、AIには検索・要約に必要な範囲だけを渡す、という設計にできます。ここは御社の方針に合わせて決めます。
Q. 画像やホワイトボードの写真も貯められますか? A. 画像の中身を読み取れるAIを使えば、写真を投げるだけで内容を文字にして貯められます。手書きのメモやホワイトボードを撮って送る、という使い方とLINE入口は特に相性が良いです。
Q. 小さく始めて、後から育てられますか? A. できます。まず Dify などで形を作って試し、使い続けられそうだと分かってから、Supabase などの自社構成に寄せて堅くする、という段階的な進め方が現実的です。最初から作り込みすぎないほうが、結局うまくいきます。
なお、この記事の例は、特定の実在企業の事例ではなく、現場でよく見る状況を組み立てた代表的なケースです。御社に当てはめた形は、診断で当たりをつけるのがいちばん近くなります。
社内に散らばった知識は、貯めるだけでは資産になりません。後から引けて初めて、次の判断に使えます。投げるだけで貯まり、意味で引ける形にしておけば、社員は「探す・思い出す」に時間を溶かさず、本来やるべき仕事に向かえます。御社のどの知識から残すと引ける資産になりそうか、まずは目安を出してみませんか。
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