「AIに作らせたのはいいけれど、これが合っているのか分からない」。一人会社や少人数の会社では、これを確かめてくれる人が社内にいません。そこで多くの人がやるのが、作らせたのと同じAIに「これで合ってる?」と聞くこと。ところが、なぜか毎回「はい、問題ありません」と返ってくる。これは偶然ではなく、AIには**相手に同調しやすい性質(追従・おべっか)**があるからです。打ち手はシンプルで、書かせたAIとは“別の系統のAI”に、わざと粗探しの役で読ませること。人の世界の「書いた人とは違う人が見直す」を、AIでも再現します。
世の中では「AIに作らせれば速い」で話が終わりがちですが、現場で本当に見落としを減らすのは、作った後に“違う目”を1回通すところです。本記事では、文章・コード・事実確認の3工程それぞれで、どのAIにどう役を振ると見落としが出てくるのか、具体名つきで紹介します(最後の判断と責任は人、という前提も最後に説明します)。
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結論:作らせたAIではなく、“別系統のAI”に批判役でレビューさせる
自己点検は甘くなります。書いたAIに「合ってる?」と聞いても、見落としは出てきにくい。同調しやすいからです。代わりに、書かせたのとは別の系統のAIに、「褒めずに粗を探す校閲者として読んで」と役を与えて読ませる。これだけで、最初のAIが気づかなかった矛盾や抜けが表に出てきます。

なぜ同じAIに聞くと甘くなるのか
対話AIには、相手の言うことに合わせよう・気分を害さないようにしようとする傾向があります。これが「追従(ついじゅう)」や「おべっか」と呼ばれる性質です。だから「これで合ってる?」と前向きに尋ねると、AIは「合っている」という方向に寄った答えを返しやすい。質問の仕方そのものが、AIに「同意してほしい」という空気を伝えてしまうわけです。
さらに、書いたAIは自分が出した内容を前提にして見直すので、最初の思い込みをそのまま引きずります。人間でも、自分が書いた文章の誤字には気づきにくいのと同じです。同じ材料・同じクセで二度読んでも、見落としは見落としのまま残ります。
ここを断ち切るのが「別の担い手」です。役割を、書く側と点検する側で分ける。点検する側には「同意者」ではなく「批判者」の役を与える。この2つを変えるだけで、チェックの精度がはっきり変わります。
ここが肝
① レビュー役には「褒めずに粗を探す校閲者として読んで」と役割を与える。② 書かせたのとは違う系統のAIを使う。この2点で、自己点検の甘さを構造で消します。
具体的に、どう仕組みにするか
“違う目”を1回通す3ステップ
- 1AIに作らせる文章でもコードでも、まずは1つのAIにたたき台を作らせます。
- 2別系統のAIに批判役でレビュー違うAIに「粗を探す校閲者として」読ませ、矛盾・抜け・怪しい箇所を出させます。
- 3人が最終判断指摘を見て、直すか・採らないかを人が決めます。公開・送信は人の確認を必ず通します。
手順にすると、こうなります。
- 1つのAIに作らせる:いつも使っているAIで、文章なりコードなりのたたき台を出します。
- 別系統のAIに役を与えて読ませる:「あなたは厳しい校閲者です。褒めずに、おかしい箇所・抜け・根拠の弱い主張だけを挙げてください」と頼みます。
- 指摘を突き合わせる:出てきた指摘のうち、本当に直すべきものを人が選びます。すべて受け入れる必要はありません。
- 人が仕上げて、最後の確認をする:公開する文章、送るメール、本番で動かすコードは、人の目を必ず最後に1回通します。

実際に、どの道具を使うのか
ここは具体名で踏み込みます。工程は「文章を書く/コードを点検する/事実を裏取りする」に分かれ、それぞれで“書く側”と“別系統のレビュー側”を分けるのがコツです。
文章を書く・文章をレビューする
書く側は ChatGPT(チャットジーピーティー・OpenAI の対話AI) や Claude(クロード・Anthropic の対話AI) が定番です。肝はレビューを別系統に回すこと。ChatGPT で書いたら Claude に、その逆なら ChatGPT に、「褒めずに粗を探す校閲者として読んで」と役を与えて読ませます。同じAIでも、別のチャット(まっさらな会話)を開いて批判役を頼むだけで、最初の思い込みを引きずりにくくなります。系統を変えるほど“違う目”になりやすい、と覚えておくと選びやすいです。
コードを点検する
プログラムやスプレッドシートの自動化(GASなど)を作らせた場合、文章以上に「動くけれど落とし穴がある」が起きます。コードの独立レビューには Codex(コーデックス・OpenAI のコード支援AI。コードを独立した目で点検できる) のような開発支援AIが向きます。書かせたAIとは別に通すことで、論理の穴や危ない処理を「別の目」で洗い出せます。
事実を裏取りする
文章の中の数字・固有名・出来事が本当に正しいかは、検索できるAIで裏を取ります。Gemini(ジェミニ・Google のAI。検索と結びついている) のように最新情報を引ける道具に「この主張の出典はあるか」と確認させると、根拠のない断定をあぶり出せます。
使い分けの早見
工程ごとの“別系統レビュー”の当て方
- 文文章 → 別AI/別チャットに批判役ChatGPT で書いたら Claude(逆も可)。「褒めずに粗を探して」と役を与えます。
- ココード → Codex 等で独立レビュー書かせたAIと別に通し、論理の穴・危ない処理を洗い出します。
- 事事実 → 検索できるAIで裏取りGemini 等に「出典はあるか」と確認させ、根拠のない断定を弾きます。
なお株式会社Head High 自身も、AIに作らせた自動化の仕組み(プログラム)を、そのまま使わず、別系統のAIに独立してレビューさせてから動かす運用にしています。書き手とは違う目を、必ず1回入れる。これを社内の決まりごとにしています。
AIレビューの限界(最後は人が決める)
“違う目”を入れても、AIのレビューは万能ではありません。レビュー側のAIも見落とすことがあり、しかも“もっともらしい嘘”(ハルシネーション=事実でないことを自信たっぷりに言う現象)を出すことがあります。「批判役のAIが何も指摘しなかった=完璧」ではない、という点は外せません。
だからこそ、最終判断と責任は人です。特に、外に出す公開物・契約に関わる文章・送信するメールやデータは、AIのレビューを通したうえで、人の確認を最後に必ず1回入れます。AIは“見落としを減らす道具”であって、“人の代わりに責任を取る存在”ではありません。
注意
AIレビューは「指摘ゼロ=安全」を意味しません。公開・契約・送信にあたるものは、別系統AIで粗を出したうえで、必ず人が最後に確認します。
つまずきやすい点
- 役を与えずに「合ってる?」と聞く:それでは追従が出ます。「褒めずに粗を探す校閲者として」と役を先に渡します。
- 同じAIの同じ会話で見直す:思い込みを引きずります。別系統のAI、最低でも別の新しいチャットで読ませます。
- 指摘を全部うのみにする:レビュー側も間違えます。採るか採らないかは人が選びます。
よくある質問
Q. AIを2つも契約しないとできませんか? A. 必ずしも2契約は要りません。まずは同じAIで「別の新しいチャットを開いて批判役を頼む」だけでも、自己点検よりは“違う目”に近づきます。そのうえで、より独立した目が欲しい工程(コードや重要な文章)から、別系統のAIを足していくのが現実的です。
Q. レビュー役のAIに、社外秘の文章を渡しても大丈夫ですか? A. 何を渡すかを線引きすれば運用できます。社外に出せない情報は伏せ字や仮名に置き換え、レビューに必要な範囲だけを渡す、という設計にできます。ここは御社の方針に合わせてご相談のうえ決めます。
Q. どこまでAIに任せて、どこから人がやるべきですか? A. 「たたき台を作る」「粗を探す」まではAI、「採否を決める」「公開・送信を確定する」は人、という線引きが基本です。判断と責任が伴うところは人に残します。
「作らせて終わり」ではなく、作った後に“違う目”を1回通す。これだけで、一人会社でも“書き手とは違うレビュー”を回せます。チェックの手間が仕組みになれば、社員は粗探しに神経をすり減らさず、本来やるべき仕事に集中できます。御社のどの作業から“違う目”を入れるとミスが減りそうか、まずは目安を出してみませんか。
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