「注文をもらったら、まず受注表に入力して、在庫の画面にも入れて、月末には同じ内容を請求書にもう一度打ち直す」。中小企業の事務まわりで、本当によく見かける光景です。
問題は作業量だけではありません。同じ数字を人の手で何度も写すたびに、ミスが生まれる余地が増えていくことです。1桁の打ち間違いが、誤発注や請求金額のズレになり、あとから謝罪と修正に時間を取られる。これがいちばん怖いところです。
私たちがこの「転記」を消すときは、たいてい3つの道具を組み合わせます。注文データをスプレッドシート上で自動的に整形・転記する Google Apps Script(グーグル・アップス・スクリプト/略称 GAS・ガス・Googleスプレッドシートを自動で動かすGoogle製の仕組み・無料)、複数のサービスをコードを書かずにつなぐ Zapier(ザピアー)/Make(メイク)、そして請求書の発行を自動化する freee(フリー)/マネーフォワード クラウド です。本文の後半で、どの工程にどれを使うかを具体的に書きます。
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結論:人が同じ数字を二度打つのをやめる
世の中では「システムを入れましょう」で話が終わりがちですが、現場で二重入力と転記ミスを消すのは、もっと地味なことです。注文データを一度だけ取り込み、あとは必要な画面へ自動で流す。これだけで、二重入力も転記ミスも、まとめて消えます。
具体的には、こういう流れに置き換えます。
- 受注(メール・FAX・注文フォーム・Excel)から、注文データを自動で読み取る
- 読み取った内容を、受注管理・在庫・請求の各画面へ自動で連携する
- 月末は請求書を自動で組み立て、人は送る前に確認するだけ
- 入金を自動で突き合わせ、期日を過ぎた未入金を自動で検出。催促文の下書きまで用意する(送るかどうかは人が判断)
ポイントは、判断が要るところ(送付前の確認、催促を送るか)は人に残し、ただ数字を写すだけの作業を仕組みに移すこと。全部をAIに任せきりにはしません。

受発注・請求まわりの作業時間:仕組み化の前と後(月・中小企業のよくある規模での試算)
浮いた時間で、事務の方は「打ち直し」から、在庫の早めの確認や入金状況の把握といった本来やるべき仕事に戻れます。人を増やさずに、月末の詰まりが解ける。これが狙いです。
向いている会社・向きにくい会社
向いているのは、注文が定期的に入り、同じ数字を複数の画面に入力している会社です。卸・小売、製造、定期的な受発注がある業種は、たいてい当てはまります。注文の形式(メール・FAX・フォーム)がある程度そろっていると、読み取りの精度も上がります。
逆に、一件ごとに内容がまったく違い、毎回その場で見積もりや交渉が必要な業務は、自動化できる比率は下がります。それでも「受けた内容を記録に変える」「請求書の下書きを作る」部分だけは、手入力の時間を減らせます。
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具体的に、どう仕組みにするか
転記ゼロにする3ステップ
- 1入口をそろえる注文がどこから入ってくるか(メール・FAX・フォーム・Excel)を洗い出し、読み取りの起点を一本化します。
- 2取り込んで自動連携注文データを一度だけ取り込み、受注・在庫・請求の各画面へ自動で流す。人が二度打ちする工程を消します。
- 3請求と回収まで通す請求書を自動作成し、未入金を自動検出。催促文の下書きまで用意し、人は確認と送信判断だけにします。
もう少しかみ砕くと、こういう作業になります。
- 多い注文パターンを洗い出す:直近の注文を見て、どんな形式で・どの項目が入ってくるかを整理します。ここが仕組みの土台です。
- 読み取りの精度を確かめる:最初は読み取った結果を人が一通り確認し、間違えやすい項目(品番・数量・単価)を見つけて直します。
- 連携先を決める:受注表・在庫・請求のうち、どの画面に何を流すかを決め、自動でつなぎます。
- 請求と未入金の自動化:取り込んだ注文から請求書を自動で組み立て、期日超過を自動で見つけて催促の下書きまで用意します。
- 少しずつ任せる範囲を広げる:最初は一部だけ自動にし、様子を見ながら広げると、現場が無理なく慣れていきます。
実際に、どの道具を使うのか
工程ごとに、私たちが実際に手に取る道具を挙げておきます。「これが正解」ではなく、現場の状況で使い分ける前提です。

① 注文データを取り込む(メール・FAX・フォーム・Excel → 一箇所へ)
注文が Googleフォーム や Excel で来ているなら、まずは Googleスプレッドシート に集約するのが素直です。基幹に近い受注/販売管理システムを使っている会社では、その API(システム同士をプログラムでつなぐ窓口)から注文データを引き出して取り込みます。「すでにシステムがあるが、そこから先が手入力」という会社はこのパターンが多いです。
② 整形・転記する(一度取り込んだデータを各画面の形に整える)
ここの主役が Google Apps Script(GAS) です。スプレッドシートに入った注文を、品番・数量・単価といった項目ごとに整えて、受注表・在庫・請求の各フォーマットへ自動で書き写します。無料で、Googleの環境の中だけで完結するのが利点です。自社の処理ルール(この取引先はこの単価、この品番は丸める、など)が細かい会社ほど GAS が向きます。

③ 複数のサービスをまたぐとき(コードを書かずにつなぐ)
取り込みから連携までが「Aサービスで受けて、Bサービスへ流す」と複数サービスをまたぐ場合は、Zapier(ザピアー)/Make(メイク) というノーコードのつなぎ役が便利です。プログラムを書かずに「○○が来たら△△する」を画面上で組めます。つなぎたいサービス同士に対応メニューが用意されているなら Zapier/Make、込み入った計算や独自ルールが要るなら GAS、というのが私たちのざっくりした使い分けです。両方を併用することもよくあります。
④ 請求書を発行する(月末の組み立て)
請求は freee(フリー)/マネーフォワード クラウド といったクラウド会計・請求サービスに任せるのが定番です。②で整えた請求データを取り込めば、請求書の発行までを自動で組み立てられます。すでに会計をどちらかで回しているなら、まずはそのまま活かすのが無理がありません。新規でこれから選ぶ場合も、この2つはどちらも国内中小企業での実績が厚く、安心して入口にできます。
役割を分けて組み合わせる
どの道具も「これ一つで全部」ではありません。①取り込み → ②整形・転記(GAS) → ③つなぐ(Zapier/Make) → ④請求(freee/マネーフォワード)と役割を分けて組み合わせるのが実務です。御社にどれが合うかは、いまの注文の入口と使っているシステム次第で変わります。
つまずきやすい点
- 読み取りを最初から全自動にする:序盤は人が確認する工程を残すのが、結局いちばん早く安全です。慣れてきたら確認を減らします。
- 注文の形式がバラバラのまま:入口が散らかっていると読み取りもぶれます。よく来る形式から手をつけるのがコツです。
- 連携先を一気に増やす:まず時間が浮きやすい一画面(請求)から通し、効果を見てから広げると失敗しにくいです。
よくある質問
Q. 読み取りを間違えて、誤発注や請求ミスにならないか不安です。 A. だからこそ、序盤は人が確認する工程を残します。間違えやすい項目だけ確認すれば、二重入力していた頃よりミスは減り、確認の手間も小さくなります。
Q. 今使っている受注表や会計ソフトはそのまま使えますか? A. 多くの場合、今の画面を活かしたまま「そこへ自動で入力する」形にできます。たとえば会計が freee やマネーフォワード クラウドなら、そこへ自動で請求データを渡す。受注表が Googleスプレッドシートなら GAS で整える、という具合です。総入れ替えが前提ではありません。
受発注と請求は、同じ数字を何度も写しているだけなのに、毎月いちばん時間とミスを生んでいる業務です。御社のどの入口から手をつけると時間が浮きそうか、まずは目安を出してみませんか。
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