「AIを試してみたけれど、一般論しか返ってこなくて、結局うちの仕事には使えなかった」。よくいただく感想です。
無理もありません。ChatGPT や Claude(クロード・Anthropic 社の対話AI) のようなAIは、世の中の一般的な知識は持っていても、御社の顧客名簿も、商品マスタも、過去のやり取りも、何ひとつ知らないからです。腕は一流でも、御社の冷蔵庫の中身を知らないシェフのようなもの。これでは、気の利いた献立は出てきません。
では、AIに「御社のこと」を分かってもらうには、どうすればいいのか。ここで出てくるのが MCP(エムシーピー・AIと外部のデータやツールをつなぐための共通規格) という仕組みです。たとえば社内文書をためている Notion(ノーション・社内Wiki/データベースツール) や Google ドライブ(グーグルドライブ・ファイル共有) を Claude にこの MCP でつなぐと、AIが「御社の棚」を自分で見にいけるようになります。聞き慣れない言葉だと思うので、なるべくそのまま使える言葉で説明します。
読みながら自社のことで考えたい方は、1分の無料セルフ診断で、御社の業務の目安を出すところから始められます。
AIに「うちのこと」を教える、2つのやり方
AIに自社の情報を渡す方法は、大きく2つあります。

1つめは、毎回その都度、手で貼り付ける方法。 「この顧客の過去のやり取りはこれです」とコピーして貼ってから質問する。一度きりなら使えますが、毎日の業務でこれを続けるのは現実的ではありません。貼り忘れれば、またピント外れな答えが返ってきます。
2つめが、AIと自社の情報・ツールを”つなぐ”方法。 一度つないでおけば、AIが必要なときに自分で「御社のデータ」を見にいき、御社の事情を踏まえた答えを返します。この”つなぐ”ための共通の仕組みが、MCPです。
MCPとは、AIと自社をつなぐ「安全な窓口」
MCPを一言でいえば、**AIが御社のデータやツールにアクセスするための、決まった形の「窓口」**です。
たとえるなら、銀行の窓口です。お客様(AI)が金庫(データ)に直接手を伸ばすのではなく、窓口を通して「必要な手続きだけ」を行う。窓口があるからこそ、誰が・何を・どこまで触れるのかを管理できます。
会計ソフト など
見て答える
この仕組みの何が良いかというと、つなぐ相手と範囲を、こちらで決められることです。「請求データは見せるが、人事情報は渡さない」「読み取りはさせるが、書き換えはさせない」。別の記事でお伝えした”情報の境界”を、技術の側からきちんと引けます。
御社のどの業務なら、安全につなげて自動化できそうか。業種と業務を選ぶだけの無料セルフ診断で目安が出ます。
「何でもつなげばいい」わけではない(正直なところ)
ここは正直にお伝えします。MCPで何でもつなげば便利になる、という単純な話ではありません。
つなぐほどAIにできることは増えますが、同時に「どこまで任せ、どこから人が確認するか」の設計が重みを増します。やみくもにつなぐと、かえって管理が複雑になり、見えないリスクも増えます。
私たちが大切にしているのは、御社の業務の中で”最も手間が減る一点”を見極め、そこだけを安全な形でつなぐこと。技術として何ができるかではなく、御社の経営にとって何が要るかから逆算します。
実際に、どの道具を使うのか
抽象的な話が続いたので、ここからは実際に「うちのことを分かるAI」を組むとき、工程ごとにどんな道具を使うのかを具体的にお伝えします。
① 対話するAIそのもの
ここは Claude(クロード・Anthropic 社の対話AI)や ChatGPT を使います。MCP という規格にきちんと対応しているAIを選ぶのがポイントで、Claude は MCP を発表した本家でもあり、外部のデータやツールにつなぐ用途では定番です。社内に手元のPCで動かしたいといった事情がある場合は、自社サーバーで動かせるAIを選ぶこともあります。御社の機密度に応じて、どこでAIを動かすかから決めます。
② 何をつなぐか(データソース)
すでに御社が情報をためている場所をそのまま窓口にします。社内マニュアルや議事録なら Notion(ノーション・社内Wiki/データベースツール)、契約書や資料ファイルなら Google ドライブ(グーグルドライブ・ファイル共有)、というように、今ある置き場に MCP の窓口を付ける形です。新しい場所に引っ越す必要はありません。バラバラに散らばっている会社ほど、まず置き場をひとつに寄せるところからのご提案になります。
③ 「意味で探す」土台(RAG)
御社のデータが数千ページに増えると、AIに毎回ぜんぶ読ませるわけにはいきません。そこで、文書を意味のかたまりで覚えさせ、質問に近い中身だけを取り出す RAG(ラグ・関連する社内情報だけを探して渡す仕組み) を間に挟みます。この土台には、Supabase(スーパーベース・データベースと認証をまとめて持てる開発基盤)に pgvector(ピージーベクター・「意味の近さ」で文書を検索できる拡張機能)を組み合わせる構成が定番です。「先月の請求トラブルに似た過去事例」のように、言葉が一致していなくても意味が近い情報を引ける。ここが、ただの検索との違いです。
どういう時にどれを選ぶか
機密度が高ければ①のAIを動かす場所から検討し、データが少なければ②のデータソース直結で十分、量が増えて精度が要るなら③のRAGを足す。御社の規模と中身を見てから、必要な分だけ組み合わせます。最初から全部は要りません。
まとめ:「うちのことを分かるAI」は、設計でつくれる
3行まとめ
AIが一般論しか返さないのは、御社のことを知らないから。MCPで自社の情報やツールに安全につなげば「事情を踏まえた、もう一人の社員」に近づく。肝心なのは、つなぐ範囲と境界を経営の目線で設計することです。
MCPという仕組みで自社の情報やツールに安全につなげば、AIは「御社の事情を踏まえた、もう一人の社員」に近づきます。つなぐ範囲と境界を経営の目線で設計する。そこが、私たちのような外部の役割だと考えています。
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※ 本記事は仕組みの考え方を分かりやすくお伝えするためのもので、技術的な厳密さより、つかみやすさを優先しています。