「請求書の発行、経費の処理、勤怠の集計。この辺りを何とかしたい」。ここまでは決まっているのに、次の一歩で止まる会社が多くあります。誰に相談すればいいのか分からないからです。
検索すれば会社のホームページはいくらでも出てきます。ただ、そこに書いてあるのはどこも「できます」であって、「うちの困りごとは、どの種類の相手に持っていくと早いのか」には答えてくれません。相手の得意な形が分からないまま話を聞くと、返ってきた提案が自社に合っているかを判断できません。
この記事では、バックオフィスの自動化を頼める相手を5つの種類に分け、それぞれが得意なこと・苦手なことを並べます。読み終わったときに「うちはこの種類に相談すればいい」または「うちはまだ着手しないほうがいい」と、自分の言葉で言える状態を目指します。
先に決めておくこと
社内でやるか、外に出すか。ここをまだ決めていない場合は、先に 内製 vs 外注:中小企業のAI導入はどちらが得か を読んでから戻ってくると判断が早くなります。この記事は「外に相談すると決めた後」の話です。
結論:相談先は「既製品を入れるのか・つなぐのか・流れを作り直すのか」で決まる
相談先は、会社の規模や予算より先に、やりたいことが次の3つのどれに当たるかで決まります。①今ないソフトを入れれば片づくなら、そのソフトを出している会社。②ソフトとソフトの間が手作業で埋まっているなら、その隙間をつなぐ設計ができる相手。③そもそも誰が何をいつやるかという業務の流れ自体を決め直す必要があるなら、業務側の設計から入れる相手。この3つのどれに当たるか分からないまま「自動化したいので相談したい」と持ち込むと、相手が得意な形に寄せた提案が返ってきます。それが自社に合っているかは、こちらが判断軸を持っていないと分かりません。
| やりたいことの型 | どういう状態か | 当たるとよい相談先 |
|---|---|---|
| ①既製品を入れる | 今ないソフトを導入すれば片づく | 業務システムのベンダー |
| ②つなぐ | ソフトとソフトの間、または紙とソフトの間が手作業で埋まっている | AI導入支援・業務自動化の会社/フリーランス |
| ③流れを作り直す | 誰が何をいつやるか、から決め直す必要がある | 業務設計から入れる相手(会計事務所・総合コンサル・AI導入支援) |
3つは排他ではなく、実際には②と③が混ざっている場合が多くあります。混ざっているなら、混ざったまま相談してかまいません。大事なのは「どれが主なのか」を一言で言えることです。
相談先は大きく5種類
| 相談先の種類 | 得意なこと | 苦手なこと |
|---|---|---|
| 業務システムのベンダー(会計・販売管理・勤怠などのソフト会社) | 自社製品の機能で解決できる範囲。導入手順・設定・サポート窓口が整っている | 製品の外側にある作業。他社のソフトやメール、紙をまたぐ部分 |
| AI導入支援・業務自動化の会社 | 今ある道具をつないで隙間の手作業をなくす設計。形の揃っていない情報の処理 | 会計や労務の専門判断そのもの。大規模な基幹システムの入れ替え |
| 会計事務所・税理士 | 経理業務の中身と流れの理解。会計ソフトの使い方や日々の運用の相談 | 会計の外側の業務(受発注・在庫・問い合わせなど)。仕組みづくりの対応範囲は事務所ごとに大きく違う |
| フリーランス(個人の開発者) | 小さな仕組みを速く作る。1業務だけの依頼を受けやすい | 体制の継続性。作った人が離れると直せる人がいなくなりやすい |
| 総合コンサルティング会社 | 業務全体の設計、部署をまたぐ調整、経営層を巻き込む進め方 | 小さな1業務だけの依頼。規模が小さいと受けてもらいにくい |
見分け方も添えておきます。ベンダーに相談すると話は「その製品でできること」に収れんするので、まず今使っているソフトの提供元に聞くのが順番として一番早いです。たとえば会計ソフトの freee(フリー・クラウド型の会計ソフト)を使っているなら、やりたいことが標準機能や公式の連携で片づく場合があります。ここを確認しないまま外に作らせると、あとから「その機能、最初から付いていた」となります。
顧問の税理士は、自社の経理の中身を社外で一番よく知っている相手です。現状を整理する相談相手としては適しています。ただし申告・税務相談・税務書類の作成といった税務の判断そのものは税理士の担当領域であり、そこと仕組みづくりは別の話です。事務所によって、自動化の設計まで請け負うところと、会計ソフトの運用相談までのところがあります。まず「どこまで対応しているか」を聞くところから始めます。
AI導入支援・業務自動化の会社は、②の「つなぐ」を主戦場にします。GAS(ガス・Google スプレッドシートなどを自動で動かせる無料の仕組み)のように、今ある道具の上に載せる作り方が中心なので、既製品の入れ替えより小さく始められます。その代わり、会計や労務の専門判断そのものは扱いません。
書き手の立場
この記事を書いている株式会社Head High は、この2つめの型に当たります。だからこそ、この型が苦手とすることも他と同じ濃さで書いています。
フリーランスは「1業務だけ、短い期間で」という依頼が通りやすい相手です。速さと引き換えに、作った後をどうするかを最初に決めておく必要があります。仕組みの説明書を残してもらえるか、手が離れる時にどう引き継ぐかを、依頼前に確認しておきます。
総合コンサルティング会社は、部署をまたぐ調整や経営層を巻き込んだ進め方が要る規模の話に向きます。逆に「請求書の発行だけ何とかしたい」には重すぎます。
向いている会社・向きにくい会社
相談先の種類が分かっても、今が着手のタイミングかどうかは別の話です。ここは両方の側から並べます。
今、外に相談すると進みやすい会社
- 同じ作業が毎月・毎週、だいたい決まった形で繰り返されている
- その作業のやり方を、最初から最後まで説明できる人が社内にいる
- 「この作業をなくしたい」と言い続けている当事者がいる(誰も困っていない作業は、仕組みにしても使われません)
- 使っているソフトやファイルの置き場所を、ある程度は把握できている
今は見送ったほうが早い会社
- 同じ業務のやり方が担当者ごとに違い、まだ揃っていない
- 繁忙期の真っ最中で、現場の話を聞ける人が誰もいない
- 「何を自動化したいか」がまだ言葉になっておらず、「とりあえずAIで」から先に進めない
- 決裁する人が、この件に1時間も時間を取れない
「向きにくい」は、この先ずっと向かないという意味ではありません。順番の問題です。やり方が揃っていないなら先に揃える、繁忙期なら過ぎてから動く。そこを飛ばして相談だけ先に進めると、要望が固まらないまま見積もりだけが増えていきます。
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相談する前に、紙1枚で決めておく4つ

- どの作業か:「経理」ではなく「請求書の発行と送付」まで細かく書く
- 月に何回・何時間か:ざっくりで問題ありません。この数字が相手を比べる時の共通言語になります
- 今使っている道具は何か:会計ソフト、スプレッドシート、メール、紙。全部書き出す
- 社外に出したくない情報はどれか:取引先名、金額、個人情報。ここは最初に線を引きます
4つめは後回しにされがちですが、相談の途中で出てくると設計をやり直すことになります。どこまでを社内に置き、どこから先を外の道具に渡すか。この線引きの考え方は 機密をAIに渡して大丈夫か:情報の境界の作り方 にまとめています。
この紙1枚を、同じ内容のまま2〜3社に渡します。同じ前提に対して返ってくる提案が違えば、その差がそのまま各社の得意な形です。こちらの情報がバラバラだと、提案の差が「相手の違い」なのか「渡した情報の違い」なのか分からなくなります。
費用と、最小の始め方
金額そのものより先に確認したいのは、どういう形でお金がかかるのかです。大きく3つあります。
- 月額の利用料でかかる型:ソフトを入れる場合。使い続けるかぎり払い続けます
- 一度の制作費でかかる型:つなぐ仕組みを作る場合。作ったものは自社に残ります
- 顧問料や委託料に含まれる型:業務ごと外に預ける場合。作業そのものが手元から離れます
同じ金額でも、一度きりの支払いなのか毎月続くのかで、3年後の総額はまったく違います。見積もりを受け取ったら、まずこの型を確認します。そのうえで、最初の一歩はできるだけ小さく取ります。
最小の始め方(3ステップ)
- 11つの作業に絞る回数が一番多いものを1つだけ。まとめて頼まない
- 2今のやり方を渡す画面の順番どおりに箇条書き。完璧な資料にしなくてよい
- 3小さく作って1か月使う合わなければ止められる範囲で。使ってから次を広げる
ここが肝
1か月使ってみると、頼む前には見えなかった要望がたいてい出てきます。最初から全部を設計しようとするより、1つ動かしてから広げるほうが、結果として手戻りが減ります。
つまずきやすい点
- 「全部まとめて」で相談する:範囲が広いほど見積もりは重くなり、判断も遅くなります。1業務に絞ったほうが、相手の実力も見えます
- 比べる軸を持たないまま提案を受け取る:どの相手も自分の得意な形で答えます。先に「①既製品/②つなぐ/③流れの作り直し」のどれが主かを決めておきます
- 作った後、誰が直すのかを決めていない:業務は変わります。修正を誰に頼むのか、費用はどうなるのかを契約前に確認します
- 社外に出す情報の線引きを後回しにする:ここが決まっていないと、設計そのものをやり直すことになります
情報の線引きは、相談先の種類にかかわらず共通して必要です。自動化した業務で扱う情報の一部は、社外のサービスを通ることがあります。何を社内に置き、何を渡すのか。設計の段階で線を引いておけば、後から慌てずに済みます。
外に出さないと決めた範囲
必要な範囲だけ
よくある質問
Q. どこに相談しても「うちならできます」と言われませんか? だいたい言われます。だからこそ、こちらが先に「①既製品/②つなぐ/③流れの作り直し」のどれが主かを決めておきます。同じ紙を2〜3社に渡せば、返ってくる提案の差が、そのまま相手の得意な形になります。
Q. 税理士に自動化の相談をしてもいいですか? 経理の流れを社外で一番よく知っている相手なので、現状整理の相談先としては適しています。ただし申告・税務相談・税務書類の作成といった税務の判断そのものは税理士の担当領域で、仕組みづくりまで請け負うかは事務所ごとに違います。まず対応範囲を聞くところから始めてください。
Q. AIを扱う相談先と、これまでのシステム会社は何が違いますか? 形が揃ったデータを決まった手順で処理するだけなら、AIがなくても仕組みは作れます。AIが加わって変わるのは、メール本文や書類のような形の揃っていない情報を扱える範囲が広がる点です。今「人が読んで判断してから入力している」作業があるなら、AIを扱える相手に当たる価値があります。入力も出力もきれいに揃っているなら、従来型のシステムでも足ります。
相談先を決めるのは、会社の規模ではなく、作りたいものの種類です。そこを一言で言えるようになれば、どの相手と話しても主導権はこちらに残ります。そして仕組みが動き出せば、社員が請求書の束や転記作業から離れ、本来やるべき仕事に時間を戻せます。
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